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当社が開発した “MoGRAA® ディスカバリーエンジン” は、GPCRに対する医療用機能性抗体の開発を可能にする最先端技術です。現在、当社ではこのテクノロジーを活用し、抗体医薬の開発を目的としたリード抗体の開発を進めています。

GPCRに対する抗体

Gタンパク質共役型受容体(GPCR )は様々な疾患との関連性が示されており、医薬品を開発する上で重要な標的分子群の1つです。GPCR を標的とした医薬品は、代謝性疾患、循環器疾患、自己免疫、呼吸器疾患、中枢性疾患などに応用されています。

GPCR関連医薬品はGlobal Dataに基づき解析したところ2020年末現在、全新薬の世界売上高は7兆9536億(全体の12.7%)、売上品目は113品目(全体の19.0%)にのぼり、依然高い割合を占めています。しかしながら、ここ数年、明らかに低分子化合物による GPCR 創薬の上市確率が低下し続けいるのが現状です。その一方、抗体医薬製剤はその有効性と安全性の高さに加え、商用大量生産技術のコモディティ化から、世界的な売上高(2020年末現在、17兆3512億円)を順調に伸ばしています。順調な売上拡大の影で、2020年後半以降に上市が見込まれる新規抗体医薬に対する標的分子の枯渇が顕在化しつつあります。

当社では、そうしたバイオ医薬品将来市場の動向を予想し、また従来の GPCR 創薬の欠点を克服するため、“抗体を用いて GPCR の機能を制御する”という新たなコンセプトでの抗体創薬を行っています。

GPCRは細胞での発現量が少ないことや、膜外に露出した部分が少ない構造を持つことからモノクローナル抗体作製は難易度が高く、その中でも情報伝達を直接制御できるような機能性モノクローナル抗体の作製は特に困難とされています。

当社は、この困難を克服するため、独自の創薬探索プラットフォームMoGRAAディスカバリーエンジンを開発しました。

これまでに世界で承認されたGPCRを標的とした抗体医薬品は2品で、そのうち2018年に販売が開始されたCGRP受容体阻害剤erenumab(商品名Aimovig)は、片頭痛薬としては異例の1000億円商品になることが期待されており、これからGPCR抗体医薬の市場はますます拡大することが期待できます。

MoGRAA® ディスカバリーエンジン

GPCRを標的とした創薬の困難さを克服するため、当社は様々な先端技術要素を組み合わせることで、GPCRを標的とした抗体の研究開発に最適化されたプラットフォームとして“MoGRAAディスカバリーエンジン”を開発しました。MoGRAAとは、Modification oG-protein coupled Receptor Activation with monoclonal Antibodyを意味する略語で、当社が提唱する新しい抗体医薬品のコンセプトである、『モノクローナル抗体によりGPCRの機能を調節する』ということを表しています。

既存のサイトカインや1回膜貫通型受容体と比較して、GPCRを標的とした抗体医薬開発が困難である理由として下記の要因が挙げられます。

① 生体内に存在する GPCR と同じ立体構造を保持した状態で免疫細胞に対して結合標的となる抗原を提示することが難しい。

② GPCR は、その構造上、抗体がアクセスし結合できる細胞表面上に露出した部位が極めて限定的である。

③ 細胞当たりの標的 GPCR タンパク質の発現量が少なく,抗原作成や評価系構築が困難である。

④ GPCR には構造相同性の高いサブタイプが複数存在し、特定のサブタイプに対して結合特異性を出すことが難しい。

⑤ 機能性抗 GPCR抗体を効率的にスクリーニングする創薬手法が確立されていない。

MoGRAAディスカバリーエンジンにより、GPCRの細胞外部位を認識して結合する抗体を取得すること、さらにその中から優れた抗体医薬品の開発に適した、機能性モノクローナル抗体を見出すことが可能になります。

MoGRAA®ディスカバリーエンジンの特徴

GPCRを標的とした場合は特に、抗体を作製する際の抗原が重要になります。GPCR タンパク質や細胞外ドメインの部分ペプチドを抗原とする代わりに、標的 GPCRの 全長のタンパク質を発現するプラスミドベクターを動物の筋肉細胞に効果的に免疫する方法(DNA 免疫法)を採用することで、さまざまな機能性抗 GPCR 抗体開発に応用できるよう最適化しました。

これにより、標的GPCRに対する選択性が高く、高親和性の医療用リード抗体を取得することができるようになりました。

また、免疫動物から機能性を有する抗体を生産する B 細胞、プラズマ細胞のリンパ組織における存在頻度は、極めて低いと考えられています。従来技術であるリンパ組織のリンパ球とミエローマ細胞を融合させ、培養後の細胞上清中の抗体を評価するいわゆる“ハイブリドーマ法”では、機能性抗 GPCR 抗体の取得は極めて困難であり、非効率であることが分かりました。

そこで、B 細胞やプラズマ細胞を免疫動物より回収後、長期間の細胞培養をせずに短時間でスクリーニングする技術(RiGRASSTM: Rapid isolation of GPCR specific Antibody by Single-cell Screening System)を開発しました(特許第6881801号) 。

これらの技術を組み合わせることにより、アンタゴニストなどの機能を持つ標的 GPCRに特異的に結合するモノクローナル抗体を効率に取得することができるようになりました。